美容師免許を取得したあと、別の仕事を選び、美容の仕事から離れていたUさん。長いブランクを経て、もう一度美容の仕事に挑戦するために選んだのが「訪問美容」でした。
保育士から脱毛サロン勤務へと歩んできたUさんが、なぜ訪問美容師という新しい道を選んだのか。LBLの講習を通じて、不安を一つずつ乗り越えながら技術を身につけていった過程を、講師の指導記録とUさん自身の言葉から追っていきます。
未経験・ブランクを経て、訪問美容師への挑戦を決めたUさん

| 年齢・性別 | 30代・女性 |
| 保有資格 | 美容師免許 |
| 美容師としての実務経験 | サロン等での就業経験なし(ブランク期間中に家族・友人の髪を約2年カット) |
| 直前までの仕事 | 保育士を経て、脱毛サロンに勤務 |
| 受講コース | Bコース |
Uさんが訪問美容に興味を持ったきっかけは、介護士をしている知人から紹介してもらったことでした。
「社会貢献がしたいと前々から強く思っていて、介護士の知人から紹介していただく機会があったので挑戦してみようと思いました」と、当時の気持ちを話します。脱毛サロンでの仕事を続けながら、新しい分野に一歩踏み出す決断をしました。
講習先を選ぶ際は、地域のスクールを一通り調べたそうです。
「私の住んでいる地域にあるスクールはすべて調べましたが、他にはない魅力を感じたのが、価格と現場体験ができる点でした。少しでも現場の空気感や職員さんとのやり取りが知りたかったのでLBLに決めました」というのが、LBLを選んだ決め手でした。
挑戦を決めた一方で、受講を申し込む前、Uさんには高齢者との関わり方への戸惑いもありました。
- 高齢者との会話や接し方が難しそう
- 認知症の方への対応をどうしていいかわからない
- 車椅子やベッド上での施術はどうするのか
- サロンよりも技術を求められない仕事だと思っていた
- 一人で現場に行くため責任が重そう
- ボランティアに近い仕事だと思っていた
技術面でも、具体的な不安を挙げていました。
- 要望通りの髪型にできる自信がない
- 身体が曲がっている人も多いので左右対称に切れるかわからない
- 短く切りすぎてしまわないか心配
- バリカンを使ったことがないので不安
- 車椅子やベッド上でカットできる気がしない
- 道具の使い方に慣れていない
- 自分一人で現場に出る自信がない
- 練習だけで本当にできるようになるのか不安
中でも最も不安に感じていたのは、ショートカットと刈り上げでした。「ショートカットや刈り上げのスタイルは、ほとんど経験がないので自分にできるのか不安です」と、受講前から具体的な課題を口にしていました。
この不安と向き合いながら、Uさんの挑戦が始まります。

ワンレングスとレイヤーの基礎から始まった講習1日目
5月13日、Uさんの講習を基本姿勢とコームの使い方の確認から始めました。カットする際は目線の高さを意識することが基本ですが、顔を近づけた状態で作業していたため、少し距離を取って全体を確認しながら進めるよう指導しました。
コームも適当に髪を梳かすのではなく、放射状に動かしながら仕上がりをイメージするように伝えました。この日のうちに、ワンレングスとレイヤーそれぞれの基礎理論も一通りお伝えしています。
基礎理論をお伝えしたあとは、実際の技術チェックに入りました。ここで見えてきたのは、Uさんに合ったペースを一緒に見つけていく最初の一歩でした。
LBL講師の山崎事前のヒアリングではある程度技術力があると認識していたので、まずは簡単な技術チェックから始めましたが、ウィッグへの触れ方や所作を見て、Uさんに合わせたペースで基礎からじっくり進めていくのが一番だと感じました。
実際に話を聞いてみると、その理由が見えてきました。



確認したところ、これまでカットしてきたのは子供や親族、友達が中心で、ワンレングスに取り組むのも今回が初めてとのことでした。
まっさらな状態からのスタートだと分かったので、その場でUさんに合わせたカリキュラムに組み直しました。
基礎からのスタートとなりましたが、Uさんの飲み込みの早さは初日から際立っていました。
説明した内容をその都度確認しながら取り組み、一度教わった内容はすぐに実践に生かしていく姿勢が印象的です。基本をしっかり理解しようとする真剣さは、初日から一貫していました。
この日の内容を踏まえ、宿題はワンレングスを重点的に仕上げる形に変更。次回までにワンレングスを完成度70点程度まで仕上げ、レイヤーについても基本的な切り方をある程度習得してもらうことを目標に設定しました。
基礎が固まり次第、グラデーションとショートカットに進み、訪問美容の現場でより実践的な技術を身につけてもらう計画です。レイヤーの練習では、実際に解説しながらカットする動画を撮影してもらい、テキストと合わせて取り組んでもらう方法を採用しています。
宿題のレイヤーカットに見えた、着実な仕上がり
5月25日は、前回の宿題だったレイヤーカットのチェックから始めました。全体的にかなり良い仕上がりになっており、疑問点についても積極的に質問しています。指摘した内容への対応も早く、飲み込みの早さがこの日もはっきりと表れていました。
レイヤーカットのチェックを終え、次はグラデーションボブに進む予定でしたが、その先の進め方については講習中に方針を見直しました。



本来はグラデーションとショートカットのチェックを予定していましたが、現段階ではグラデーション技術の精度向上を優先した方が良いと判断し、内容を変更し、グラデーションに集中してもらうことにしました。
今後の進め方についても、この日のうちに方針を固めています。



今のところ5回目の講習までは技術習得を最優先とし、座学についてはテキストを活用しながら進めていく予定です。
まずは実技の土台づくりと、基本動作・シルエット理解の定着を重視して指導を行っています。
グラデーションボブに取り組むUさんからは、自主練習に力を入れている様子が伝わってきました。手先が器用で、教えた内容を形にするスピードが速いのも印象的です。
理解するだけで終わらせず、実際に再現しようとする意識がこの日の練習からもうかがえました。
次回までの課題は、グラデーションボブの完成度を70点程度まで高めることを課題に設定しました。あわせて、なるべく早い段階で刈り上げ技術の練習まで進み、全体的な技術チェックを行える状態を目指します。
宿題では、今回も実際に解説しながらカットする動画を撮影してもらい、テキストと合わせて自主練習に取り組んでもらう形にしました。
「感覚派」という気づきが、指導方法を変えた日






6月1日は、前回の課題だったグラデーションボブのチェックから始めました。全体的に大きな問題もなく、想定以上に良い仕上がりです。
苦手とする方が多いスタイルですが、この日のUさんは大きくつまずくこともなく、安心できる結果に。講習中には疑問点や不明点について、その場で積極的に質問しており、理解しようとする姿勢も引き続きうかがえました。
グラデーションボブのチェックを終え、この日はショートカットの講習に進みました。当初は刈り上げ技術の指導を予定していましたが、習得順序を考慮してショートカットの講習へ変更。ここで、Uさんの学び方の特徴が見えてきました。



Uさんは理論から入るよりも、まず完成形や全体像を見て理解する「感覚派」の傾向が強いと判断。
そのため、講師が最初に一通りカットを実演し、完成までの流れを見せる方法へ方針を変更しました。
この気づきは、その後の練習方法にも反映されています。



私がカットしている様子を動画で撮影してもらい、テキストと合わせて自宅練習時の教材として活用してもらうことにしました。
完成形を先に見せる方法に切り替えたことで、理解や習得のスピードは明らかに向上。
言葉だけで説明するよりも、視覚情報を先に与えたほうがイメージを共有しやすいことを、この日あらためて実感しました。受講生ごとに「理論派」「感覚派」の違いがあり、指導方法を柔軟に変える必要性にも気づかされた一日です。
次回は午後から現場研修を予定しているため、実際のお客様対応の中で今回学んだ内容をどこまで再現できるかを確認していきます。
宿題は、ショートカットとグラデーションボブの反復練習に加え、講習中に撮影した動画とテキストを併用して、カット手順と考え方を整理してもらう内容にしました。
初めての現場研修、ベッドカットで感じた現実の難しさ
6月8日は、ショートカットと刈り上げの技術チェックに続いて、初めての現場研修です。この日はスケジュールの都合で駆け足の講習となったため、次回あらためて理解度の確認と技術の定着状況をチェックすることにしました。






午後からは現場研修に移り、ベッド上でのカットの体験です。ウィッグでの練習とは違い、利用者の姿勢や環境に合わせて手を動かす現場ならではの難しさに直面し、Uさんからは「一人ではまだ難しいかもしれない」という声が聞かれました。
現場特有の緊張感を、この日肌で感じた様子でした。ここでの指導は、技術面だけにとどまりません。



今回も復習用として参考動画を撮影し、持ち帰って確認できるようにした。
現場研修や座学でも、丁寧な説明を重ねています。



現場研修および座学では、ベッド上での姿勢の整え方や、利用者の状態・環境に応じたカット方法、現場で実際に起こり得るトラブル事例、安全管理について説明を行いました。
技術だけでなく、訪問理美容ならではの考え方や判断基準についても理解を深めてもらうことができたと思います。
限られた時間の中ではありましたが、予定していなかった座学まで実施することができました。
現場研修では男性、女性を問わず、さまざまな長さのヘアスタイルのお客様に対応する機会があり、ベッドカットの経験を幅広く積んでもらえた点は、この日の大きな収穫でした。
宿題は、ショートカットの反復練習と刈り上げ技術の習得・精度向上に加え、駆け足で説明した刈り上げの解説動画を見返し、角度や手順の意味を意識しながら練習してもらう内容にしました。
ベーシック全工程が終了。基礎技術がひと通り身についた
6月17日は、ショートカットと刈り上げの技術チェック、そしてセニング理論の講習を行いました。
ショートカットのチェックでは、フェミニンスタイルのサイドに丸みを作る際の引き出し角度に細かな調整の余地があり、耳後ろのコーミングをより丁寧にする点が伸びしろと感じます。
刈り上げのチェックでは、バリカンの当て方を安定させる練習が必要な状態でした。これらの課題に対しては、その場で一つずつ実践を交えながら指導しました。



ショートカット(フェミニンスタイル)では、サイドの引き出す角度の再確認と、耳後ろではコーミングをより丁寧に行うことと、引き出す位置と角度を再確認しました。
刈り上げについても、実践を交えて丁寧に指導しています。



刈り上げでは、バリカンの当たりが不安定だったため、どの部分を頭皮に密着させるのかを実践しながら指導しました。
コームも不安定だったため、接合部の処理についてはデメリットを伝えた上で、セニングを活用してぼかす方法を指導しました。
まずはセニングで接合部を整えられるよう練習し、将来的にはバリカンによる接合部の処理へ移行していくよう伝えました。
セニングについては、この日は基礎の考え方を中心に伝えています。



セニング理論については、基礎的な考え方や目的を中心に説明を行いました。特に、セニングを多用しないほうがよい箇所や、入れすぎた場合に生じる変化について説明しました。
次回は実践的な使用方法や入れる位置による変化など、より詳しい内容を説明する予定です。
事前に「あまりうまくいっていない」という話もされましたが、実際に技術を確認すると吸収力の高さが際立っていました。指摘した内容を素直に取り入れながら修正し、短時間のうちにある程度形にしていきます。
この日をもって、ベーシックの全工程が終了しました。次回はショートカットと刈り上げを重点的に、仕上がりの安定感をさらに高めていきます。
技術は身についてきた。次の課題は「判断しきる力」
6月29日は、ショートカット・刈り上げ・セニングの復習を行いました。理論や技術の流れは着実に理解が進んでいて、この日はさらに一歩踏み込んだ課題と向き合う回になりました。
重さを残すか取るか、細かな判断に迷う場面もありましたが、これは技術が身についてきたからこそ見えてくる、次のステップの課題です。
刈り上げでは、前回の課題に手応えを感じた一方、新たな注意点も見つかりました。



刈り上げについては、前回課題となっていたバリカンの当て方や刈り上げの高さ設定に改善が見られました。
顔周りの残し方については、刈り上げ位置がやや高くなる場面があったので、自然なつながりを作るための残し方をあらためて一緒に確認しました。
ショートカットでは、つなぎの部分に伸びしろが見つかっています。



ショートカットでは、ミドルセクションからアンダーセクションへのつなぎ部分で、下部に重さが残りやすい傾向が見られました。
前回から引き続き見られる耳後ろの重さについても、再度確認し、毛流れや引き出し方を含めて一緒に見直しました。
また、明日は現場研修を予定しているため、状況を見ながら入客できる機会があれば積極的に経験してもらいたいと考えています。
指導内容に対する吸収力は相変わらず高く、その場での修正や改善はスムーズでした。もともと施術スピードが速いことは、現場で求められる時間管理の面で強みになっています。
次回はいよいよ現場研修です。比較的フォローしやすい耳出しショートスタイルのお客様を1名以上担当することを目標としました。
最終日、現場での確かな仕上がりに見えた成長
6月30日、講習の最終日は、半日の現場研修とポイントの復習を行いました。これまで課題としていた部分にも少しずつ改善が見られ、大きな修正を加えなくても形にできるようになってきています。
以前はあっちを切ったりこっちを切ったりと迷いながら進めていましたが、この日は自分で判断しながらカットを進められる場面が増え、技術面での成長がはっきりと感じられる一日となりました。
この日の現場研修では、実際のお客様を担当しています。



最終日は、訪問美容の現場で研修を行いました。お客様は姿勢が傾いている方で、ショートヘアを3~4センチ程度カットする内容でしたが、仕上がりは良好でした。
大きな修正を加える必要はほとんどなく、全体のバランスもきれいに整っていました。
施術時間の面でも、確かな手応えがありました。



施術時間も約30分で、訪問美容の現場で求められる施術スピードとしても合格ラインに達していたと感じます。
特に、実際のお客様への施術だからこそ生じる襟足の処理、耳周りの安全な切り方など、ウィッグ練習だけでは学びきれない部分を指導することができました。
これまで苦手としていたショートカットの襟足や耳後ろのカットが、実際のお客様にも対応できていた点は大きな成長です。
耳周りや襟足は安全面と仕上がりの両方が求められる難しい部分ですが、途中で声をかけながらも落ち着いて対応できていました。



本日が最後の講習となりましたが、Uさんは確かな基礎を身につけてくれました。
姿勢や立ち位置、引き出し方、ハサミの角度、耳周りや襟足の安全確認、これらが自然と身体に馴染んでいくほど、現場での自信はどんどん大きくなっていくはずです。
今回培った基礎を土台に、これからの現場でさらに大きく育っていってくれることを楽しみにしています。
LBLの講習を終えて、Uさんが感じたこと


一番戸惑ったのは、引き出す角度と車椅子でのカット
LBLの講習を振り返り、Uさんが一番戸惑ったのは、髪を引き出す角度の理解と、車椅子でのカットでした。
「髪の毛の一部を引き出す角度を理解することと、実際に経験した車椅子でのカットでお客様の身体が傾いていていつもの調子でカットできないことに戸惑いました」。
ウィッグでの練習では想定しきれない、現場ならではの学びを得た瞬間だったといえます。
現場を体験できたことが、一番良かった点
その一方で、現場を体験できたことこそが、LBLで受講してよかった点だと振り返ります。
「実際の施設での経験を通して訪問施設の流れを具体的に知れたり、利用者さんとの関わりを学ぶことができ、今まで自分がやってみたいと思っていたことが、私にもできるという自信に繋がったのが一番良かったかなと思います」
高齢者との接し方や認知症の方への対応に不安を抱えていた受講前のUさんにとって、現場の空気を実際に肌で感じられたことが、大きな転機になったようです。
講習を通じて得た、技術と気持ち両面の変化
技術面でも気持ちの面でも、講習を通じて変化がありました。カットの基本的な手順が理解できるようになり、施設で安全に施術するためのポイントもつかめるようになっています。
実際にお客様を担当した経験から、「自分でもできる」という感覚を得られたことも大きな収穫でした。そして何より、練習を重ねれば上達できるという自信が、LBLの講習の中で育っていきました。
もっと練習したかったのは、ショートカット
もっと練習したかった部分として挙げているのは、ショートカットです。「使用頻度が最も高いショートカットをもっと練習したかったと思います」というUさんの言葉には、訪問美容の現場を見据えたうえでの、次への意欲がにじんでいます。
美容師として働いた経験がないまま、挑戦を決めたUさん。高齢者対応への戸惑いや技術への不安を抱えながら始まったLBLの講習を通じて、現場を知ることで確かな自信を得ていきました。


































































































