業務委託の美容師として働くとき、あるいは業務委託の美容師を迎えてサロンを開くとき、管理美容師が必要なのかは意外と答えが出にくいところです。
条文で基準となっているのは、美容師である従業者の人数で、業務委託や面貸しの美容師がそこに数えられるのかは、読んだだけでは判断がつきません。
管理美容師を置く義務を負うのは、美容所を開設した側です。業務委託で働く美容師が、自ら管理美容師の資格を取得する必要があるかどうかは、立場と、美容師である従業者の人数によって決まります。
サロンを開く側、業務委託や面貸しで入る側、訪問美容として働く側とパターンごとに見ていけば、自分の場合に管理美容師が必要かどうかをその場で判断できます。
管理美容師が必要になるのは、美容師が常時2人以上いる美容所
管理美容師は、美容所の衛生管理を担う責任者のことです。美容所の開設者には、常に清潔に保つこと、消毒設備を設けること、採光・照明・換気を十分にすることなどが義務づけられています。
厚生労働省は、管理美容師の制度を、美容業務の運営を適正に保ち、施設の衛生管理と利用者の衛生を守るために設けられたものと位置づけています。
置かなければならないのは、美容師である従業者が常時2人以上いる美容所です(美容師法第12条の3)。
人数に数えるのは美容師免許を持つ従業者に限られ、免許のない受付スタッフは入りません。義務を負うのは美容所を開設した側で、美容師が開設者1人だけのサロンなら置かなくて構いません。
開設者本人が管理美容師の資格を持っていれば、自分で兼ねることもできます。ただし兼ねられるのは、自ら主として管理する1つの美容所だけです。
置かないまま営業を続けると、都道府県知事が期間を定めて美容所の閉鎖を命じることがあります(第15条)。罰金の対象になるのは、その閉鎖命令に従わずに営業を続けた場合で、上限は30万円です(第18条)。
管理美容師がいないことだけで、すぐに罰金が科される仕組みではありません。法人が開設者の場合は、法人にも同じ罰金が科されます(第19条)。
業務委託で管理美容師が必要かどうかは、立場と人数で決まる
| 立場 | 管理美容師 | 設置義務を負う人 |
|---|---|---|
| 自分1人で美容室を開く | 不要 | なし |
| 雇用の美容師を迎えて、美容師が常時2人以上になる | 必要 | 開設者 |
| 業務委託の美容師を迎えて美容室を開く | 要確認 | 開設者 |
| 面貸し・シェアサロンを運営する | 要確認 | 開設者(運営側) |
| 業務委託・面貸しで他のサロンに入る | 自分は不要 | サロンの開設者 |
| 訪問美容を業務委託で行う | 自分は不要 | 原則なし |
美容室を開く側は、業務委託の美容師を迎えるときも開設前に保健所へ確認する
美容師を雇用して常時2人以上になるなら、管理美容師を置いて、開設の届出に氏名と住所を記載し、資格を証する書類として講習の修了証を添える流れです。選任したあとに変更があれば、変更の届出も必要です。
要件を満たす美容師が自分だけなら、自分が管理美容師を兼ね、ほかにいなければ資格を持つ美容師を迎えるか、先に講習を受けておく形になります。
業務委託や面貸しの美容師を入れる場合は、その人を人数に数えるかどうかです。契約の名目が業務委託でも、その美容所で常時施術しているなら、従業者として数えられることがあります。
届出には従業者の氏名も載せるので、人数に数える扱いになれば、美容師が入れ替わるたびに変更の届出も提出することになります。
迷うところなので、開業前に美容所の所在地を管轄する保健所へ、業務委託や面貸しの美容師を従業者に数えるのか、管理美容師が必要になるのかを聞いておきましょう。自分で講習を受けて資格を取っておけば、美容師が増えても慌てずに済みます。
面貸し・シェアサロンでは、美容所を開設して届出を出すのは運営側という考え方が主流で、席を借りる美容師が登録し直す必要はありません。
1つの施設に複数の事業者が入る形の管理美容師の扱いは自治体で差が出るので、運営する側は開設前の相談で確認しておくと安心です。
業務委託や面貸しで入る側に、管理美容師の資格は求められない
管理美容師を置く義務を負うのは美容所の開設者で、条文の適用を受ける美容師に関する定めはありません。業務委託や面貸しで他のサロンに入る美容師は、自分が管理美容師でなくても働けます。
ただ、美容所が閉鎖を命じられれば、その期間中は働く場所がなくなります。契約前に、美容所の開設届が提出されているか、美容師が2人以上いるサロンなら管理美容師が置かれているかを、サロン側に聞いておくと安心です。
管理美容師になるには、3年の実務と18時間の講習が必要
| 受講資格 | 美容師免許の取得後、3年以上美容の業務に従事 |
|---|---|
| 講習内容 | 公衆衛生4時間、美容所の衛生管理14時間(計18時間) |
| 日数 | 3日間 |
| 受講料 | 2万円前後(令和8年度) |
| 申込窓口 | 公益財団法人理容師美容師試験研修センター |
| 修了後 | 修了証を美容所の開設届に添付(原本提示) |
講習は都道府県が指定した日程で開かれ、申込受付期間が1〜2週間と短いのが特徴です。定員を超えると抽選になる都道府県もあるので、受講を考え始めたら、早めに窓口で次の開催時期を確認しておきましょう。
実務経験3年の数え方は、自治体の案内では、美容所での業務従事と記載されている場合があります。業務委託や面貸しで働いてきた期間がどう扱われるかは、申込の前に窓口へ確認してください。
1人につき登録できる美容所は1つだけで、他の美容所の管理美容師を兼任することはできません。
業務委託の美容師にとって、管理美容師の資格は、取得が任意で、取らなくても働けます。それでも、求人の中には、管理美容師資格を歓迎条件に挙げるものがあり、店長やマネージャーを業務委託のまま募集する求人もあります。
将来自分で美容室を開くつもりなら、美容師が2人以上になる前に取得しておきましょう。
teto代表中山管理美容師の資格取得のハードルは低いので、受講資格を満たしたら、今すぐ必要ではない状態でも取得しておくことをおすすめします。
訪問美容の業務委託は、管理美容師の資格がなくても働ける
業務委託で働く場所は、サロンだけではありません。訪問美容にも業務委託の募集があり、報酬の決め方は歩合や時給など会社によって異なります。
美容所を構えない訪問美容は、設置義務の対象外
訪問美容は、施設・病院・個人宅など美容所以外の場所へ出向いて施術する働き方です。
美容師が美容所以外で施術を行えるのは、疾病などで美容所に来られない人や社会福祉施設の入所者への施術のように、政令などで認められた特別の事情がある場合に限られます(美容師法第7条)。
管理美容師の設置義務は美容所の開設者に課されるもので、美容所を構えない訪問美容はその対象になりません。業務委託で訪問美容の会社に勤務する美容師が、自ら管理美容師の資格を取得する必要はないです。
厚生労働省の衛生管理要領は、美容所を開設していない事業者が常時2人以上の美容師を出張美容に従事させる場合、衛生管理責任者として管理美容師の資格を持つ人を置くことが適当としています。
法律上の義務ではなく自治体への技術的な助言で、対象も事業者側です。働く側の美容師に資格を求めるものではありません。
出張美容に必要な届出などの手続きは自治体で異なります。気になる点は、施術する地域を管轄する保健所に確認しましょう。
訪問先が美容所として登録されている施設は例外
施設によっては、仮設のスペースではなく、一室をサロンのように整えて美容所として保健所に届け出ています。その部屋で施術する場合、施設側から管理美容師の在籍を求められることがあります。
管理美容師は他の美容所の管理美容師を兼ねられないので、そうした施設が複数あれば、その数だけ有資格者が必要です。会社に資格を持つ人が何人いるかで、担当できる施設の数が決まります。
業務委託で入る側は、こうした施設を担当する可能性があるのか、その場合は会社の有資格者が対応するのかを、応募時の面談で尋ねておきましょう。



tetoでは約400施設と契約しておりますが、美容所として登録され、管理美容師が必要な施設は2件です。現状ではかなり特殊な例となっています。















