訪問美容の市場規模や将来性が気になっている美容師の方も多いのではないでしょうか。本記事では、公的データをもとに訪問美容の市場規模を試算するとともに、訪問美容師の需要の現状と今後の見通しをわかりやすく解説します。
データから見る訪問美容の現状

高齢化と外出困難者の増加
総務省「統計トピックスNo.142」(2024年9月)によると、2024年時点で65歳以上の高齢者は3,625万人、総人口に占める割合は29.3%と過去最高を更新しています。
国立社会保障・人口問題研究所の推計では、2030年には高齢化率が3割を超え、2060年には4割近くに達する見通しです。
| 年度 | 要介護・要支援認定者数 |
|---|---|
| 2000年度 | 約260万人 |
| 2021年度 | 約682万人 |
| 2023年度末 | 約708万人 |
| 2024年度 | 約720万人 |
| 2040年度(推計) | 900万人超 |
介護や支援を必要とする人の数も増え続けており、厚生労働省「介護保険事業状況報告」によると、要介護・要支援認定者は2000年度の約260万人から2024年度には約720万人まで拡大。2040年度には900万人超に達すると予測されています。
また、厚生労働省「2024年国民生活基礎調査」では、65歳以上の一人暮らし世帯が903万世帯にのぼることも明らかになっています。足腰が弱ってきたり体調が優れない日が増えると、一人で美容室に行くことが難しくなります。
高齢者の外出困難は、こうした独居世帯を中心に今後さらに深刻化していくと考えられます。
外出困難者は高齢者だけではありません。厚生労働省「令和4年生活のしづらさなどに関する調査」によると、障害児・者数は1,164万人(全人口の約9.3%)にのぼり、5年前から24.3%増加しています。
要介護認定者と障害者を合わせると、訪問美容を必要とする潜在的な利用者層は相当な規模になることがわかります。
在宅介護の拡大
日本の介護政策は、施設から在宅という方向に長年シフトし続けています。
厚生労働省は公式の方針として、「施設中心の医療・介護から、可能な限り住み慣れた生活の場において必要なサービスが受けられる社会を目指す」と明記しており、在宅介護の拡大は今後も国策として続いていきます。
厚生労働省「介護保険事業状況報告」(2024年12月分)によると、現在、在宅で介護サービスを受けている人は約436万人であるのに対し、施設に入所している人は約97万人。在宅と施設の比率はおよそ4.5:1と、介護の大半はすでに在宅で行われています。
さらに同報告の推計では、2026年度の在宅介護サービス利用者は407万人に達し、2023年度の381万人から7%増加する見通しです。
在宅介護が拡大するということは、自宅で生活しながら介護を受ける高齢者が増えるということです。そうした方々にとって、美容室へ出かけることはますます難しくなります。
訪問美容はこうした在宅療養者の生活に直接入り込めるサービスであり、在宅介護の拡大とともにその需要も自然と高まっていきます。
データから見る訪問美容の市場規模

高齢者人口と潜在顧客数
訪問美容は施設向けと在宅向けの2つに分かれるので、それぞれ顧客数の把握をします。
厚生労働省「介護保険事業状況報告」(2024年12月分)によると、特別養護老人ホームや介護老人保健施設などの介護保険施設に入所してサービスを受けている人は全国で約97万人。これが施設向け訪問美容の直接的な潜在顧客数です。
2024年度の要介護・要支援認定者は約720万人。そこから施設入所者97万人を差し引いた約623万人が、自宅や地域で生活しながら介護を受けている人たちです。
| 対象 | 人数 | 算出方法 |
|---|---|---|
| 施設向け潜在顧客 | 約97万人 | 厚労省「介護保険事業状況報告」2024年の施設サービス利用者数 |
| 在宅向け潜在顧客 | 約623万人 | 要介護認定者720万人から施設入所者97万人を差し引いた推計値 |
| 合計 | 約720万人 |
1人あたりの年間利用回数と単価
次に、1人あたりの利用頻度と料金を設定します。ヘアカットの頻度は美容室の一般的な利用ペースと同様、2カ月に1回(年6回)を基準とします。(実際にtetoでも施設入居者の平均カット頻度は2か月の1回です)
料金については、当サイトが全国の訪問美容事業者を調査した都道府県別の訪問美容カット料金データを使用します。施設向けと在宅向けでは料金体系が大きく異なるため、それぞれ別に設定しました。
| 対象 | カット料金(全国平均) | 出張費 | 1回あたり合計単価 |
|---|---|---|---|
| 施設向け | 2,226円 | なし(施設でまとめて施術) | 2,226円 |
| 在宅向け | 4,206円 | 約1,000〜2,000円(中間値1,500円) | 5,706円 |
施設向けは複数の利用者をまとめて施術するため出張費が単価に含まれないケースが一般的です。在宅向けは1件ごとの個別訪問となるため、カット料金に加えて出張費が発生します。
推定市場規模の計算
潜在顧客が全員訪問美容を利用するわけではないため、現実的な利用率を設定した上で試算します。施設向けと在宅向けでは、利用率の根拠が大きく異なります。
施設向けについては、利用率を90%で設定します。介護施設では、入居者のヘアカットは施設側が外部の訪問美容業者と契約して対応するのが一般的です。
美容師・理容師免許を持つ介護職員が施術するケースもごく一部に存在しますが、訪問美容サービスを手がけるteto(当サイト運営)が数百施設に対して行った営業活動のなかで、それを理由に断られた施設はわずか2件にとどまります。
また契約施設のデータでも、入居者の9〜10割が定期的に施術を受けています。施設向けは事実上ほぼ全員が訪問美容の対象になると考えて差し支えありません。
在宅向けについては、施設向けのような公的データや業界調査が存在しないため、正確な利用率を算出することができません。家族が自宅でカットするケースも多いので、仮定として利用率30%を用いて試算します。
| 対象 | 潜在顧客数 | 利用率 | 利用者数 | 単価 | 年間回数 | 試算市場規模 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 施設向け | 97万人 | 90%(現場実態による) | 約87万人 | 2,226円 | 6回 | 約1,163億円 |
| 在宅向け | 623万人 | 30%(仮定) | 約187万人 | 5,706円 | 6回 | 約6,402億円 |
| 合計 | 720万人 | 約274万人 | 約7,565億円 |
この試算はカットのみを対象としており、カラーやパーマ、ネイルなどの付加メニューは含んでいません。在宅の利用率30%はあくまで仮定であり、実際の数字は前後する可能性があります。
ただし施設向けだけを見ても1,000億円を超える規模があり、在宅の潜在市場はさらに大きいことを考えると、カットだけでも数千億円規模の市場が存在するといえます。
訪問美容師の将来性|需要は今後さらに拡大する

訪問美容の潜在顧客である要介護・要支援認定者数は、2024年度時点で720万人に達しており、前年度から15万人増加しています(厚生労働省「介護保険事業状況報告」)。
この数字は今後も増え続ける見込みで、厚生労働省の推計によると2040年度には900万人を超えるとされており、現在からさらに約180万人分の需要が上積みされる計算になります。
需要拡大の背景にあるのは、団塊世代の高齢化です。1947年〜1949年生まれの団塊世代は、2025年までに全員が75歳以上の後期高齢者となります。
さらに2040年には、1971年〜1974年生まれの第2次ベビーブーム世代が65歳以上に差しかかり、65歳以上人口の割合は総人口の34.8%に達すると国立社会保障・人口問題研究所は推計しています。
年齢が上がるほど要介護認定率は高まるため、高齢者の絶対数が増えること自体が、訪問美容の需要を直接押し上げます。
一方で、介護サービス全体の担い手不足はすでに深刻な状況です。厚生労働省の試算では、2040年度までに介護職員を約57万人純増させる必要があるとされていますが、2022年度から2024年度にかけて介護職員数は実質横ばいのまま推移しており、目標達成のめどは立っていません。
訪問美容師についても同様の構造的な人手不足が続いており、需要の拡大に供給が追いつかない状況は今後さらに顕著になると考えられます。
要介護認定者数は2000年度の約260万人から2024年度の720万人へと、この24年で約2.8倍に増加してきました。この事実を踏まえると、訪問美容の市場が長期的な成長トレンドにあることは明らかです。
少子高齢化が続く日本において、訪問美容は需要が縮小することのない数少ない分野のひとつといえます。
teto代表中山現時点でも、訪問美容業界は人手不足です。tetoをはじめ、多くの施設と契約している会社は積極的に人材採用を行っています。















