病気やけがで療養中のとき、美容室に行くのをあきらめていませんか。訪問美容は高齢者だけのサービスと思われがちですが、病気やけがで外出が難しい方も利用できます。
がんの治療中で通院だけで精一杯だったり、骨折でギプスをつけていて一人での移動が難しかったりする。そのような状態でも、美容師が自宅や病院まで出向いてカットやカラーを行えます。
どのような病気やけがなら対象になるのか、逆にどのような場合は対応が難しいのか、申し込みの際に何を伝えればいいのかがわかれば、療養中でも身だしなみを整える選択肢を安心して選べます。
病気・けがで外出が難しい方は訪問美容を利用できるのか
訪問美容は高齢者向けというイメージを持たれがちですが、対象を決めているのは年齢ではなく、外出が難しいかどうかという点です。
厚生労働省の通知でも、疾病や骨折などのけがによって理容所・美容所に来ることが社会通念上難しいと認められる場合は、出張での美容サービスを受けられるとされています。
厚生労働省:理容師法施行令第4条第1号及び美容師法施行令第4条第1号に基づく出張理容・出張美容の対象について
1 理容師法施行令第4条第1号及び美容師法施行令第4条第1号には次のような者が該当すると考えられること。
(1) 疾病の状態にある場合のほか、骨折、認知症、障害、寝たきり等の要介護状態にある等の状態にある者であって、その状態の程度や生活環境に鑑み、社会通念上、理容所又は美容所に来ることが困難であると認められるもの
実際に対象となるのは、次のような状況です。
- 入院や自宅療養が必要な病気にかかっている
- 骨折や手術後などのけがで一人での移動が難しい
- 治療の副作用や体力低下で長時間の外出に耐えられない
20代でも60代でも、この状態に当てはまれば訪問美容を利用できます。逆に、高齢であっても自分の足で美容室まで行ける方は対象になりません。診断書の提出を求められることもなく、予約の際に体の状態を伝えるだけで利用を申し込めます。
骨折して松葉杖での移動になった、手術直後でギプスをしている、抗がん剤治療で外出のたびに体力を消耗してしまう。こうした一時的な状態でも、外出が難しいと判断できれば訪問美容の対象になります。
長期の療養だけでなく、数週間から数か月といった期間限定の状態でも利用できる点は、意外と知られていません。

訪問美容の対象になる病気・けがの具体例
対象になる病気の例
病気を理由に訪問美容を利用する場合、病名そのものよりも外出できるだけの体力や状態を保てているかどうかが、判断のポイントになります。次のような病気で自宅療養や通院治療を続けている方は、対象として利用できます。
- がんの治療中で通院や入院を繰り返している
- 心疾患や呼吸器疾患などで長距離の移動が体に負担をかける
- 難病指定を受けていて症状の波がある
- うつ病や不安障害など、人前に出ることや外出そのものが負担になる精神疾患
- 脳梗塞などの後遺症でリハビリ中の状態
抗がん剤治療の副作用で立っているだけでも疲れてしまう、あるいは、うつ病で家から一歩も出られない日が続いている。こうした状態も、来店するのが難しいという条件に当てはまります。
対象になるけがの例
けがの場合は、固定や安静が必要な期間かどうかで判断します。次のようなけがで通院中の方、または自宅で安静にしている方も訪問美容を利用できます。
- 骨折してギプスやシーネで固定している
- 手術後で傷口の安静が必要な状態
- 足の捻挫や脱臼で松葉杖を使っている
- 交通事故などによる大きなけがでベッド上での生活が続いている
骨折は完治まで数週間から数か月かかることが多く、その間ずっと美容室に行くのを我慢する方も少なくありません。
ギプスを外した後もリハビリで思うように動けない期間が続くことがあるので、松葉杖が外れるまでといった短い期間の利用でも対象となります。
訪問美容を断られる可能性がある、対応が難しいケース
病気やけがの状態によっては、訪問美容を申し込んでもその場では対応できないと判断されることがあります。断られる可能性があるのは、主に次のような状況です。
- インフルエンザやノロウイルスなど、感染力の強い病気にかかっている急性期
- 高熱が出ている、意識がはっきりしないなど、施術中の体調変化が心配される状態
- 皮膚に広範囲の疾患や傷があり、器具や薬剤が触れることで悪化する恐れがある場合
- 体調や病状について訪問美容の会社側で判断がつかず、医師の許可が必要と考えられる場合
感染力の強い病気にかかっている間は、利用者本人だけでなく担当する美容師や、同じ日に別の利用者を訪問する場合は、その方への感染も心配されます。熱が下がって症状が落ち着くまで日程をずらすといった対応になることがほとんどです。
骨折や術後のけがであっても、痛みが強く体勢を保つこと自体が難しい、点滴中で腕を動かせないといった状態では、施術そのものが体への負担になります。
無理に予定通り進めるのではなく、状態が落ち着くタイミングを一緒に相談しながら、施術を続けるかどうかなどを決めてください。
対応できるかどうかは病名だけで一律に決まるものではなく、申し込み時に伝えられた体調や状況をもとに、その都度確認しながら判断されます。不安な場合は、事前に今の状態を詳しく伝えておくと当日のトラブルを避けやすくなります。
病気・けが療養中の方が申し込む際の流れと伝えるべきこと
申し込みの際は、病名そのものよりも今の体の状態を具体的に伝えることが、当日スムーズに施術を受けるためのポイントです。電話やお問い合わせフォームで伝えておきたいのは、次のような内容です。
- 現在の症状や治療の状況(通院中か入院中か、自宅療養中かなど)
- 座った姿勢を保てるか、ベッド上での施術になるか
- 点滴や医療機器を装着しているか
- 意思疎通が難しい場合はご家族や付き添いの方の同席が可能か
骨折で松葉杖を使っている場合は、椅子に座って施術できることがほとんどなので、通常の訪問美容と大きく変わりません。
一方で、ベッド上での安静が必要な場合は、ベッドの高さや周りのスペース、体を横向きにできるかどうかといった情報があると、当日の準備がスムーズになります。
予約が確定した後は、当日までに体調が変わることもあります。熱が出た、痛みが強くなったなどのように、申し込み時と状態が変わった場合は、無理に予定通り進めようとせず、事前に連絡しておくと日程の調整がしやすいです。
当日は、施術前に改めて体調の確認を行ってから作業に入ります。途中で痛みが出た、疲れてしまったという場合は、その場で中断や休憩を挟むこともできるので、無理に最後まで我慢する必要はありません。
美容師側が病気や怪我のお客様相手に気をつけるべき対応のポイント
病気やけがで療養中の方に対応するときは、通常のカットやカラーとは違う視点での確認が必要になります。施術前に体調を確認し、無理のない範囲で進めることが、利用者にとっても美容師にとっても安全な施術につながります。
施術前の体調確認
訪問時は、まず顔色や息づかい、会話への反応などから体調に変化がないかを確認します。予約時に聞いていた状態と違う様子があれば、その場で施術を続けるかどうかを利用者やご家族と相談します。
熱っぽい、いつもより顔色が悪いといった小さな変化でも、声をかけて確認することが必要です。また、施術中に具合が悪くなる方もいらっしゃるので、常にお客様の体調の変化に気を配るようにしてください。
感染対策
免疫力が下がっている方や治療中の方を担当する場合は、通常以上に感染対策を徹底します。マスクの着用や手指消毒はもちろん、使用する道具は毎回消毒したものに交換し、複数の利用者を続けて訪問する日は、間に十分な消毒の時間を確保します。
体への負担を減らす工夫
ベッド上での施術や、同じ姿勢を長く保てない方には、工程を分けて休憩を挟んだり、シャンプーを省いてカットだけに絞ったりと、その日の体力に合わせてメニューを調整します。
骨折で腕が上がらない場合や、点滴中で片側の動きが制限されている場合は、体勢に合わせてハサミやコームの角度を変えるなど、こちら側が動き方を工夫することになります。
医療的な判断が必要な場合の連携
体調に不安があり、施術を続けてよいか判断がつかないときは、美容師の判断だけで進めず、ご家族や施設のスタッフ、場合によっては医師や看護師に確認しましょう。
訪問美容はあくまで理美容の範囲でのサービスなので、医療行為が必要な状態かどうかの見極めは自分たちだけで抱え込まないことが大切です。




