訪問美容師として働きたい、あるいは独立を考えている美容師の中には、管理美容師の資格が必要かどうかで迷っている方が少なくありません。実務経験3年と講習の受講が条件になる資格だけに、取得すべきかどうかで開業のスケジュールも変わってきます。
結論からいうと、訪問美容師に管理美容師の資格が必要かどうかは、働き方によって答えが変わります。個人で活動する場合と会社として複数人で運営する場合とでは判断基準が異なり、さらに例外的なケースも存在するので注意が必要です。
自分の働き方に当てはめて読み進めれば、資格取得の要否がはっきりします。
訪問美容師に管理美容師の資格は必要?結論から解説
個人事業主やフリーランスとして1人で訪問美容を行う場合、管理美容師の資格は必要ありません。管理美容師は、美容所に所属する美容師が常時2人以上いる場合に設置が義務づけられるため、1人で活動している間は対象になりません。
会社として複数人体制で訪問美容サロンを運営する場合は、店舗を構える一般的な美容室とは前提が異なります。美容所という固定の施設を持たない訪問美容には、店舗型と同じ基準をそのまま当てはめることができません。
一方で、訪問先によっては管理美容師の在籍を求められる場合もあります。この違いを、店舗型と訪問美容を比較しながら次の項目で見ていきます。
店舗型の美容室と訪問美容の違いで見る、管理美容師の位置づけ
店舗を構える一般的な美容室においては、美容師法第12条の3第1項により、常時2人以上の美容師が働く美容所には管理美容師の設置が義務づけられています。ここでいう美容所とは、保健所への届出と検査を経て開設された固定の施設のことです。
訪問美容はこの美容所という枠組みに当てはまりません。訪問先は利用者の自宅や施設の居室であり、保健所に届け出た固定の美容所ではないため、美容師法第12条の3第1項の対象外になります。
つまり、複数人で訪問美容を行っていても、この条文を根拠に管理美容師の設置を義務づけられることは、原則としてありません。
| 店舗型の美容室 | 訪問美容 | |
|---|---|---|
| 管理美容師の設置 | 常時2人以上で法律上の義務 | 原則として対象外 |
| 根拠 | 美容師法第12条の3第1項 | 該当条文なし |
| 位置づけ | 法的義務 | 設置しなくても違法にはならない |
ただし、厚生労働省は出張理容・出張美容に関する通知の中で、常時2人以上の美容師を出張業務に従事させる場合、衛生管理責任者として管理美容師の資格を持つ者を置くことが望ましいという考えを示しています。
これは都道府県への技術的助言という位置づけであり、法律で定められた義務ではなく、衛生管理の観点からの推奨事項です。
第7 自主管理体制
1 衛生管理責任者の設置
理容師法第11条の4第1項又は美容師法第12条の3第1項の規定に該当しない営業者が出張理容・出張美容を行う場合において、常時2人以上の理容師又は美容師を出張理容・出張美容に従事させる場合には、事務所等の設備、器具等の衛生の点検管理、従業員の感染症罹患の有無の確認、従業員の衛生教育等を行う衛生管理責任者として、理容師法第11条の4第2項の規定に基づく管理理容師又は美容師法第12条の3第2項の規定に基づく管理美容師の資格を有する者を置くことが適当であること。
2 衛生管理要領の作成及び周知
営業者又は衛生管理責任者は、出張理容・出張美容に係る作業環境や取扱い等に係る具体的な衛生管理要領を作成し、従業員に周知徹底すること。
teto代表中山厚生労働省の「出張理容・出張美容に関する衛生管理要領」では、訪問美容事業者に対して管理美容師を配置することを法的義務とはしていません。
常時2人以上の美容師が出張美容に従事する場合には、衛生管理を行う責任者を定め、その役には管理美容師の資格を有する者を置くことが適当であるとされており、衛生管理上の推奨事項として示されています。
そのため、管理美容師を配置していないことだけをもって、この通知上直ちに違法となるものではありません。
ただし、都道府県や保健所によって運用や指導内容が異なる場合があるため、事業を行う地域の保健所へ事前に確認することをおすすめします。
訪問美容でも管理美容師が必要になる例外的なケース


訪問美容は美容所に該当しないので管理美容師は原則不要ですが、訪問先の施設によっては例外が生じます。
介護施設の中には、仮設のスペースで施術を行うのではなく、一室を理美容室として整備し、保健所に美容所として届け出ているところがあります。
この場合、その部屋は法律上の美容所そのものになるので、施設側から管理美容師の在籍を求められるので、管理美容師の資格が必要です。
ここで注意したいのが、管理美容師は1人につき1つの美容所にしか登録できない点です。ある美容所の管理美容師として届け出た人は、同時に別の美容所の管理美容師にはなれません。
そのため、こうした美容所登録済みの施設が複数あると、施設の数だけ管理美容師の資格保有者が必要になります。



tetoでも、訪問先の施設が美容所として保健所に登録されているケースが1件あり、管理美容師の在籍を求められました。
私も管理美容師の資格を保有していますが、店舗を私の名義で登録しているため、私が管理美容師として対応することはできません。
ただ、tetoには管理美容師の資格保有者が複数在籍しているので、別のスタッフがその美容所の管理美容師として届け出て対応できています。
訪問美容の会社・個人事業主として備えておきたいこと
先ほどのような美容所登録済みの施設案件は、訪問美容の中でも頻繁に発生するものではありません。ただ、実際に起きた時点で管理美容師の資格保有者が1人しかいない、あるいは1人もいない状態だと、その施設からの依頼を受けることができません。
管理美容師は1つの美容所にしか登録できないため、複数の施設から同時に依頼が来た場合、資格保有者の人数がそのまま対応できる件数の上限になります。
会社として訪問美容を展開していくのであれば、管理美容師の資格保有者を1人に頼らず、複数人育てておくことが選択肢を広げることにつながります。
個人事業主として1人で活動している場合は、こうした施設案件そのものを受けることができません。依頼が来た時点で資格を持つ美容師と提携する、または自分自身が資格取得に動くといった判断が必要になります。
管理美容師の資格は取得までに3年以上の実務経験と講習の受講が必要なので、案件が発生してから準備を始めると間に合わないことも考えられます。
管理美容師の資格を取得する条件と方法
管理美容師になるには、美容師免許を取得した後に3年以上の美容業務の実務経験を積む必要があります。
この実務経験は美容所での勤務が対象となるため、訪問美容だけで働いてきた期間がどう扱われるかは、資格取得を考える都道府県の窓口に確認しておくと安心です。
実務経験の条件を満たした後は、厚生労働大臣が定める基準に沿って都道府県知事が指定する講習会を受講してください。講習は数日間の日程で行われ、修了することで管理美容師の資格が得られます。
開催時期や申し込み方法は都道府県ごとに異なるので、事前に管轄の保健所や講習実施団体に問い合わせておくとスケジュールが立てやすくなります。
資格取得までにかかる期間を考えると、施設の案件などで管理美容師が必要になってから動き始めるのでは間に合いません。
訪問美容の仕事を広げていく計画があるなら、実務経験3年を満たした時点で講習の受講を検討しておくと、いざという場面で対応できる体制を早めに作れます。
必要な美容所に管理美容師を置かないとどうなるか
管理美容師の設置義務が生じるのは、常時2人以上の美容師が従事する美容所の場合です。
美容師法第12条の3に違反してこの義務を果たしていない場合、都道府県知事はその美容所に対して期間を定めた閉鎖命令を出すことができます。この閉鎖命令に従わずに営業を続けると、美容師法第18条に基づき30万円以下の罰金の対象になります。
訪問美容そのものは美容所に該当しないので、この罰則の対象にはなりません。
ただし、訪問先の施設が美容所として保健所に登録されている例外的なケースでは話が変わります。その部屋は法律上、美容所に該当するため、管理美容師を置かないまま営業を続ければ、店舗型の美容室と同じ罰則の対象になります。
訪問美容だからといって管理美容師の設置義務が無関係というわけではなく、訪問先の性質によっては店舗型と同じ責任が発生することを、会社としても個人事業主としても頭に入れておいてください。











