訪問美容を始めても、施設営業でなかなか契約が取れないと悩む人は多いです。実際には、施設は既存の専門業者との取引がすでにある場合も多く、個人の場合は契約獲得の難易度が高いことがあります。
この記事では、個人が契約を取るための現実的な営業戦略を解説します。
訪問美容の営業でまず知るべき現実

施設が既存の業者でほぼ埋まっている理由
訪問美容の営業を始めようとしたとき、多くの方が最初に直面する課題が「すでに他の業者が入っています」というお断りの文言です。これは営業上の常套句ではなく、実際に専門業者と契約している施設が多いのが実情です。
施設側としても、慣れた業者との取引を継続することには、一定の利点があることが多いです。スケジュール管理や利用者への対応など、長年の取引で築いた信頼関係があるため、大きな事情がない限り切り替えが起きにくい傾向があります。
昔からのつながりで個人の美容師が入っているケースもありますが、引退や廃業などのタイミングで、専門業者へ切り替わるケースも見られます。
teto代表中山私が始めた頃は、まだ個人でも営業すれば施設との契約を取れることもありましたが、現在、個人で施設との契約を取るのはかなり厳しいと感じます。
個人がいきなり契約を取るのが難しい理由
個人が施設営業で苦戦しやすい要因として、すでに専門業者が対応しているケースが多い点です。
専門業者は複数のスタッフで対応していることが多く、1日に多数の利用者に対応できる体制を整えています。施設では、個人では物理的に対応できない規模の依頼が来ることも多く、求められる体制や対応範囲が異なる場合があります。
また、専門業者は施設側の運営フローを熟知した上で動いており、対応の幅や柔軟性でも差があるのが事実です。実績が少ない段階では、飛び込みや電話のみで契約に至るのは難しい場合があると理解した上で、営業活動を設計することが重要です。


訪問美容で施設営業をする場合の正しい進め方


営業手法(DM・電話・直接訪問)
施設への営業はDMを送ることが基本です。チラシや資料を郵送し、まず存在を知ってもらうことから始めます。その上で電話でアポイントを取り、話を聞いてもらえる機会を作ります。
直接の飛び込み訪問も行いますが、担当者が不在だったり対応できない状況も多いため、DMで先に情報を届けてからアポを取る流れが現実的です。
アポの取り方とNG例
電話でアポを取る際、「すでに他の業者がいるので」と断られることは珍しくありません。ただし、電話での連絡のみにとどまらず、資料だけでも受け取ってもらえないか打診することも一つの方法です。
直接訪問する場合は、担当者に会えなくても名刺やチラシを置いてもらえるよう依頼するだけでも一定の効果が見込めます。
一方で避けるべきは、何の接点もない状態で初対面の段階から長時間の説明に入ることや、担当者でない人に詳細な売り込みをすることです。相手の時間を取りすぎる営業は印象を悪くします。
訪問タイミングと担当者の見極め方
施設への訪問タイミングは月末から月初を避けることが基本です。この時期は請求処理など事務作業が集中しやすく、担当者が忙しい場合があるため、十分に時間を取っていただきにくいことがあります。月半ばを目安に調整するのが適切です。
窓口となる担当者を特定することも重要です。受付や現場スタッフではなく、外部業者との契約に関わる立場の担当者への取次ぎを依頼できるよう、意識して対応することが、営業の成功率の向上につながります。
持参すべき資料(名刺・実績・料金表)
施設への営業では、初回の接触で判断材料を渡しておくことが重要です。名刺はもちろん、どのような施術に対応できるか、対応エリア、料金、保有資格や経験年数などを一枚にまとめたチラシを用意しておきましょう。
担当者が不在でも資料を置いてもらうだけで、後日検討の俎上に載る可能性があります。逆に何も残さず帰ると、名前も顔も記憶に残りません。資料は必ず持参し、手渡しできなくても置いていく前提で準備しておくことが基本です。
施設が訪問美容の業者を切り替えるタイミング


よくある不満(技術・衛生・遅刻)
施設が既存の業者に不満を持つ理由で最も多いのが技術不足です。
カットの仕上がりに対して利用者やご家族からクレームが入り続けると、施設としても業者の変更を検討せざるを得なくなります。技術力は契約を維持するための最低条件であり、同時に新規参入の機会にもなります。
衛生面でのトラブルも契約解除につながる大きな要因です。道具が汚れたまま持ち込まれる、カットした髪の毛が散ったまま放置される、水や薬剤が飛んで床や壁にシミができるといった問題が積み重なると、施設スタッフからの信頼を失います。
遅刻や無断キャンセルなども同様で、利用者のスケジュールに直接影響するため、施設側が特に敏感に反応するポイントです。


料金・対応力で入れ替わるケース
料金は訪問美容において非常に重要な要素です。同程度の技術力であれば、より安い業者に切り替えられることはあります。ただし、単純に安ければいいというわけではありません。
例えば認知症の利用者の誘導に時間がかかり、1時間で本来3人カットできるところが2人しか対応できないケースがあります。そういった状況を踏まえ、誘導は施設側が担当する代わりに料金を抑えるといった契約上の工夫も可能です。
逆に、誘導も含めてすべて対応できる業者は施設側の手間を減らせるため、多少料金が高くても選ばれることがあります。料金と対応範囲をセットで提示し、施設のニーズに合わせた提案ができるかどうかが差別化のポイントになります。


訪問美容で個人事業主が優先すべきは在宅営業
在宅市場は参入しやすいと考えられる理由
施設向けの営業では専門業者と競合しやすいのに対し、在宅の利用者を対象にした営業は、個人でも参入しやすい場合があります。
専門業者の多くは施設を主な対象としており、在宅を積極的に手がけていない事例も見受けられます。つまり在宅市場は、個人でも取り組みやすい領域の一つです。
また施設と異なり、在宅の場合は利用者本人やご家族が業者を選ぶ権限を持っています。
施設のように既存業者との長年の契約関係が障壁になることが少なく、ケアマネージャーや訪問看護師などから紹介を受け、利用者やご家族と接点を持てる場合があります。



在宅市場を重点的に営業している業者は少ないので、個人の方は、まずはそこから営業活動を行い、徐々に規模を大きくし施設契約を取れるようにしていくことが現実的だと思います。


リピート・競合の違い
在宅の利用者は自宅で施術を受けるため、信頼関係が築けると、継続利用につながりやすいです。施設のように一度に大人数へ対応する必要がなく、個人のペースで対応できる点も個人事業主に向いています。
競合状況の面でも、在宅市場に積極的に参入している個人や業者が、多くない地域もまだ多いです。施設営業では提案が通りにくい場合もあるため、在宅市場で実績を積むことが、長期的に安定した仕事につながる可能性があります。
訪問美容で在宅のお客様につながる人脈の作り方


在宅の利用者と関係のある職種の方々
在宅の利用者と接点を持つために、連携について最初に相談すべき相手は以下の職種です。
デイサービスは、在宅で生活しながら通所してケアを受けている利用者が集まる場所です。施設への提案とは異なり、個人に対しても連携の相談がしやすく、状況によっては、場所の提供を依頼できるほか、利用者への案内について協力を得られる場合もあります。
訪問看護師や訪問介護員(ヘルパー)は、在宅の利用者と日常的に接している職種です。利用者の生活状況をよく把握しており、美容ケアの希望がある方の情報を得られる可能性もあるため、日頃から連携の機会を設けておくことをおすすめします。
そしてケアマネージャーは在宅ケアの要となる存在です。利用者の介護計画全体を管理しており、訪問美容が必要な方につながる相談先として、重要な役割を担う職種です。ケアマネージャーとの信頼関係を築くことが、在宅営業の要点といえます。



単にお金の為に仕事が欲しいと近寄っていくのではなく、相手から必要と思われる人、仕事を紹介したいと思われる人になることが大切です。
紹介が発生する関係性の作り方
ケアマネージャーや訪問看護師などとの関係は、一度会っただけで紹介につながるものではありません。知り合ってすぐに紹介してもらえることもあれば、しばらく時間が経ってから連絡が来ることもあります。
大切なのは、紹介が必要になったときに「この地域ならあの人に頼もう」と思い出してもらえる存在になることです。
そのためには、デイサービスや訪問看護事業所が主催するボランティア活動や手伝いに参加したり、業界の集まりや情報交換の場などに、無理のない範囲で参加することが有効です。
仕事の売り込みより先に顔を知ってもらい、人となりを理解してもらうことが関係構築の基本です。個人的な関係が築けそうな時は、金銭的な内容を前面に出さず、信頼関係を大切にした連携を心がけます。
営業ではなく情報提供で入るコツ
実績が十分でない段階においては、「仕事をください」という形での提案だけでは、相手に検討材料を提示しにくい場合があります。同様の提案が多い場合、売り込みだけでは差別化が難しく、選ばれる理由になりにくいことがあります。
効果的なのは、情報提供という形で接点を作ることです。面識を得たケアマネジャーに対して、自分が対応できるエリアや施術内容を把握してもらう、デイサービスにチラシを設置していただく、といったアプローチがその一例です。
「利用者をご紹介いただけますでしょうか」という伝え方ではなく、「こういう方がいれば対応できます」と具体的に伝えることで、相手にとって参考情報として受け取られやすくなります。そうした積み重ねが、紹介という形で実を結びます。
営業活動後に選ばれる訪問美容師になるための準備


名刺・チラシに必ず入れるべき内容
営業活動を始める前に、名刺とチラシは必ず用意しておきましょう。担当者に直接会えなかった場合でも、資料を置いておくことで後日検討してもらえる可能性が生まれます。
資料を残さない場合、訪問の内容が相手に伝わりにくくなる可能性があります。
チラシに入れるべき内容は、対応可能な施術内容、対応エリア、料金、保有資格、経験年数が基本です。高齢の方や障がいのある方への対応経験がある場合は、その旨も明記しておくと、利用を検討する際の参考情報になります。
相手が一目見て「この人に頼めるかどうか」を判断できる情報を、できるだけシンプルにまとめることが重要です。
実績がない場合の見せ方
開業したばかりで実績がない場合は、どこかで経験を積み、その経験をアピールすることが有効です。正社員でなくても、アルバイトや業務委託として訪問美容の現場に携わった経験は、アピール材料になります。
現場経験がない場合は、LBLのように現場実習を含む講習を受けていることをアピールする方法もあります。
また介護職員初任者研修の資格を持っている場合は、高齢者や要介護者への対応に関する基礎知識があることを示しやすく、相手に安心感を持ってもらう材料の一つになります。


訪問美容で失敗する人の特徴


施設営業だけにこだわる
訪問美容を始めたばかりの人が陥りやすいのが、施設契約にこだわり続けることです。
訪問美容の現場は人手不足ですが、それは施設が契約先を探しているという意味ではありません。多くの施設はすでに専門業者と契約済みで、その業者がスタッフ不足のまま業務を維持しています。
美容室予約サイトに掲載すれば新規客が来るサロンとは違い、訪問美容は「始めました」と告知するだけでは契約につながりません。自分から積極的に動かないと、集客が難しい場合が多い市場です。
施設営業で断られ続けて時間と労力を消耗するより、個人でも取り組みやすい在宅市場へ早期に重点を移すことが現実的な判断です。



在宅より施設メインでやりたいけど、専門業者に就職もしたくない。そのような人は、専門業者と業務委託契約を結ぶことをおすすめします。


人脈を作らず単発営業を繰り返す
DMを継続的に送付したり飛び込み営業だけに頼ると、他社と差別化しにくくなります。実績や関係性が十分でない段階で売り込んでも、選んでいただける理由が伝わりにくい場合があります。
訪問美容はお客様本人だけでなく、施設スタッフ、ケアマネージャー、ご家族など、多くの人との関係の中で成り立つ仕事です。そのような関係者との連携を丁寧に進めることで、契約後も継続的なご依頼につながりやすくなります。
価格だけで勝負してしまう
料金は訪問美容において重要な要素ですが、価格の安さだけを訴求しても長期的な契約には結びつきません。
訪問美容の主要なサービスはカットであり、技術力が十分でない場合、利用者やご家族からご指摘を受ける可能性があり、結果として契約の継続が難しくなることがあります。
また高齢の方や障がいのある方にもご利用いただくことが多いサービスであるため、技術だけでなく利用者一人ひとりに寄り添った対応ができるかが求められます。価格の安さで選ばれても、技術と対応力が伴わなければ継続されません。
価格はあくまで入口の一つであり、継続的に選ばれるためには、利用者に満足いただけるサービスを提供することが最も重要です。











