年間400件超の施設、毎月5000名様の施術を行っている、株式会社tetoの中山ですが、最初は個人事業主から始めました。
その経験から、訪問美容師として個人で開業するとき、開業までの流れ、その過程で必要な準備や届出、開業までの注意点をまとめました。
訪問美容師を個人で開業するための流れ

訪問美容師として個人で開業される方は、以下の準備が必要です。
- 訪問美容の知識や技術を学ぶ
- 開業や経営に役立つ知識を学ぶ
- 必要な地域なら美容所の開所届
- 必要な地域なら訪問美容の届出
- 賠償責任保険などに加入する
- 車と自動車運転免許の用意
- 訪問美容に必要な道具を揃える
- 営業活動に必要なものを揃える
- 営業活動を行う
- 開業届と青色申告の申請
- インボイス登録
私の経験から、実際に仕事をスタートした後からでも問題がない10~11の申請以外は、ほぼ同時期に行った方がいいです。
項目だけ見ると大変そうですが、1つ1つを確実に行っていけば、個人事業の規模なら問題なく進められます。
訪問美容師を個人で開業|準備と届出や注意点

訪問美容の知識や技術を学ぶ
美容師としての知識や技術は問題なくても、訪問美容の技術や知識を全く知らない状態だと、大きなトラブルを起こしたり、柔軟なトラブル対応ができない場合が多いです。
私はtetoを立ち上げる前に、本格的ではないものの訪問美容も行っていた美容室で働いていたので、その経験が活きました。そこがサービス終了する時に、そのまま引き継ぎ始めたのがtetoです。
未経験のままでも、対応力やコミュニケーション力がずば抜けている人は、施設側も協力してくれる姿勢になってなんとかやっていけるかもしれませんが、それでもお客様ファーストではない状態なので、できる限り前もって勉強しましょう。
なんとなくやってこれた方もいますが、私の実感からすれば大きなトラブルがないのは運が良いだけという場合が多い。
少なくとも、ベッドカット、車いすなどで斜めの姿勢の人を安楽な姿勢にして切る方法、ベッドシャンプーは絶対に学んでおきましょう。
一般美容とは違う特殊な職場なので、勉強したり現場体験することで、自分が本当にこの道に進むべきかどうかも分かります。
teto代表中山様々な訪問美容師系の講習やスクールがありますが、私は必要な事を学ぶ上ことと、現場体験が非常に重要だと思っているので、LBLではしっかり現場体験が行えるカリキュラムになっています。




開業や経営に役立つ知識を学ぶ
意欲的に経営部分を学んでおけば、開業にかかる費用を抑えられたり、使える補助金や助成金があったり、節税できたりし、手元に残る現金を多くすることができます。
これらは、私だったら使いたいなって思う補助金や助成金です。個人事業主と言っても、1人でやるのか何人か雇うのか様々なので、自分が使えるかどうかを確認してみましょう。
私が起業する際は、確信のない自信に満ち溢れていて、何とかなるだろうという思いが優先されていました。
屋号ばっかり考えていて、経営本は買ってはいたものの、読んでも難しい言葉で意味が分からず後回し。とりあえず開業届けは済ませましたが、開業後はお金も仕事も限られていて、とにかく営業営業の日々でした。
イニシャルコスト(初期費用)、ランニングコスト(維持費用)など聞いたことも無く、具体的に考えてもいなかったので、その日の売り上げでやりくりし、ザ・自転車操業状態でした。
私が恵まれていたのは、友人、知人に起業した仲間が多かったことです。
一緒にお酒を飲めば経営の話になりやすく、「青色申告にした?」「会計ソフトは〇〇〇がおすすめだよ」「この助成金使えるんやない」「家事按分で半分は経費でいけるよ」など沢山のアドバイスをもらいました。



急な出費に対応できず、食事を削ったり、おかずは納豆のみ生活とか…、今では良い思い出ですが、無知は最大のコストです。
補助金などは、計画を作り事前に申請しなければならないので、創業時にかけた費用は1円たりとも戻ってこず、数十万の損失になりました。


必要な地域なら美容所の開所届や訪問美容の届出
私が改行した福岡市では、美容師免許があれば店舗や美容所の開所届は不要でしたが、自治体によって違うので、必ず営業する地域のルールを確認しておきましょう。
- 店舗がないと訪問美容が認められない地域
- 店舗はなくても訪問美容の届出が必要な地域
- 店舗も訪問美容の届出も必要がない地域
この3つのパターンがあるので、必要な地域ならきちんと届出を行いましょう。



tetoもエリアが広くなり、各地域に事業所を置いているので、地域によっては届出が必要なところも出てきました。
そこでは毎年、新しく訪問するようになった施設、更新された従業員数などを届出しなおしています。


賠償責任保険に加入する
美容業ははさみや薬剤を使うので、何らかのトラブルが起きることがあります。また、訪問美容だと、施術中や誘導などで事故が起きることもあります。
- 尻もちで打撲の通院費
- 転倒した際の治療費
- 耳を切った時の治療費
- カラーパーマでの頭皮の荒れ
- カラーで洋服汚れ
十分に気を付けていてもトラブルは起きるので、保険には入っておくことをおすすめします。
tetoは私が専門学生時代の担任から、組合への加入をすすめられて入ったときに、美容所賠償責任補償制度に加入しています。民間の保険会社でも同様のものがあるので、自分に合ったものを検討してください。



日本政策金融公庫の融資では美容師組合に加入していると金利優遇があります。
車と自動車運転免許の用意
東京など都心の一部では電車で行く人もいるが、ほとんどの地域は車移動です。訪問美容のための道具を持って、施設などへ行くので、車はほぼ必須と言えます。
施術する人数が少ない場合や、カット専門でカラー剤やパーマ液が不要なら荷物はかなり減りますが、それでも軽自動車はあった方がいいです。
カラーやパーマも行うなら、材料とともにワゴンや組み立て式シャンプーも必要になるので、それらを載せることができる車にしましょう。



在宅も対象にされる方は軽自動車しか駐車できない事もあるので、軽の方がいい場合もあります。
訪問美容に必要な道具を揃える
- はさみ
- コーム
- ダッカール
- ロングタイプのカットクロス
- タオル
- スプレイヤー
- 床に敷くシート
- ドライヤー
- エタノール消毒
- フェイスシールド
- 鏡
- ほうき
- ちりとり
- 粘着クリーナー
- 掃除機
- ゴミ袋
- キャリーバッグ
- マスク
- 怪我への応急措置セット
荷物が1番少ないカット専門だとしても、これだけの物は必要になります。
クロスは車いすの方がすっぽり収まるくらいの大きなサイズが必要です。全体を覆えないと、カット後に車いすに毛が残っていたりしてクレームにつながります。tetoではビューティーガレージのビッグサイズ車イス用クロスを使用しています。
服装は、清潔で美容師の見た目としても問題なければ私服で、ユニフォームは最初は不要です。鏡は持って行くが、貼られている事が多いので、そこの前でやる事が多いです。
施設からは椅子、コンセント、お湯は借りることになります。



小規模でも、カット一式、パーマ・カラーの材料やロット、シャンプーセットなどで15万円程度、レジ金と小口経費で5万円くらいは、最低でも見積もっておいた方が無難です。
必要なものを揃え営業活動を行う
営業活動はサービスオープンとともに始めるのは遅いです。
一般的な美容室なら、新規オープンとしてポータル情報サイトなどに掲載されれば多少はお客様が来てくれます。しかし、訪問美容は、自分から営業をしないと始まりません。
そのため、オープンしてからでは遅く、オープン前からしっかり営業活動を行うべきです。
営業活動の為に、名刺とパンフレットは前もって作っておきましょう。パンフレットにはメニュー・料金・訪問エリア・在宅OKかなどの情報が入っていないといけません。
営業方法としては、飛び込み・DMがメインになります。いい仕事をして施設の職員さんとつながれば事業所懇親会などへ誘って貰えるようになります。
病院、歯科医院、福祉施設、マッサージ師、訪問美容などの人が集まり、講義があって立食パーティーなどがあり、大きいと200名くらい集まります。そこで人脈を広げつつ、新たな営業先を見つけることが可能です。



評判が広まれば施設側からお声がかかる場合もありますが、最初は営業活動を頑張らないといけません。
パンフレットと名刺は、ラクスルなら1万円くらいで初期分として十分な量を作れます。
また、法人じゃないと契約できないという施設も多いので、個人事業主の方は、それ以外の施設に絞って営業を行いましょう。
開業届と青色申告の申請
| 区分 | 開業届を出さなくてもいい人 | 開業届を出した方がいい人 |
|---|---|---|
| 収入規模 | 年間所得20万円未満 | 年間所得が20万円以上 |
| 活動内容 | 単発や頻度が低い不定期 | 事業として継続運営する |
| 青色申告 | 利用予定なし | 使いたい |
| 経費計上 | 経費がほとんど発生しない | 経費が多い |
| 赤字 | 赤字でも税務上のメリットを求めない | 赤字を繰り越したい |
| 社会的信用 | 屋号・事業証明が不要 | 屋号口座開設、取引先への信用が必要 |
| 税務リスク | 税務署からの管理を極力増やしたくない | 適切に申告・帳簿管理を行う意思がある |
| 将来性 | 今後も本格化する予定がない | 将来的に法人化・事業拡大を視野に入れている |
| 公的な支援 | 受けられない場合がある | 条件に合えば補助金や助成金を受けられる |
個人事業主でも、所得税法により事業開始から1ヶ月以内の提出が原則的な法律上の義務です。提出しなくても罰則はありませんが、所得があるのに確定申告を行わないのは脱税になります。
開業届と同時に青色申告の申請も行っておきましょう。複式簿記など必要な簿記スキルは高いですが、現代では会計ソフトや会計クラウドサービスを使えば、知識がなくても対応可能です。
青色申告のメリット
- 最大65万円の青色申告特別控除を受けられる
- 事業の赤字を給与所得などと相殺できる(損益通算)
- 赤字を最長3年間繰り越せる
- 家族への給与を経費にできる(要件あり)
青色申告のデメリット
- 帳簿付けが必須
- 提出期限を守らないと無効
- 継続した事務作業が必要
- 知識ゼロだと最初は戸惑う
青色申告にすれば、最大で65万円の控除が受けられるので、売り上げ規模が小さい個人事業主にとっては、かなり大きな控除になります。
インボイスの登録
施術を受けるお客様は、散髪代を経費で落とす方はいらっしゃらないので、本来はインボイス登録は不要なんですが、求める施設は多いです。
tetoでもインボイス対応してくれという要望が多かったので、現在は登録し、適格請求書発行事業者になっています。なっていなければ、契約解除されたり、新規で契約を取れなかっただろうなと思う時は何度もあります。
個人的な関係でインボイスがなくても契約して貰えるならいいですが、現代では対応していないと営業活動が厳しくなります。新規の契約が取れないなら、インボイスへの対応も考えた方がいいでしょう。













