美容師免許なしで、高齢者施設でメイクやネイルを仕事として行いたいとお考えの方へ、現場の実情をお伝えします。
法律上の問題だけでなく、施設での需要が限定的であるケースが多い点について、訪問理美容tetoの実績データ(月間約400施設、延べ5000名超)をもとに解説します。
美容師免許なしでメイクやネイルだけで高齢者施設と契約するのは、容易ではない

先に結論をお伝えします。美容師免許なしでメイクやネイルだけを行い、介護施設や高齢者施設を相手に契約するのは、現実的に容易ではありません。
理由は需要の問題だけではありません。メイクは美容師法上「美容」に該当し、免許がない方が反復継続して、有償・無償を問わず提供する場合、法令上の問題となる可能性があります。
ネイルやエステは免許がなくてもできる部分がありますが、施設側に需要がなく、仕事として成立しません。
「高齢化社会で需要が伸びている」「資格を取れば仕事がある」といった説明を受けてスクールに通ったものの、結果的に契約を1件も獲得できずLBLに相談に来た方もいらっしゃいます。
そういった失敗を繰り返さないために、この記事では現場の実態を率直にお伝えします。
無免許のメイクは業として行えば違法
メイクアップは美容師法上の「美容」に該当します。眉毛を整える行為や、まつげのケアなども同様です。
美容師法では、美容を「業として」行うには美容師免許が必要と定められています。「業として」とは、反復継続の意思を持って行うことを指し、有料・無料は問いません。つまり、報酬をもらわなくても繰り返し施術すれば免許が必要になります。
厚生労働省の定義では、美容とは「パーマネントウェーブ、結髪、化粧等の方法により、容姿を美しくすること」とされており、メイクは「化粧等」として明確に含まれています。
なお、以下のケースは業としては該当しません。
- 化粧品販売員(美容部員)が商品販売を目的として行うデモメイク
- 顔に触れずメイク方法を指導するだけの業務
- 非公募の友人・知人への同意のもとでのメイク
ただし、施設でお客様に施術して報酬を得ることは、いずれにも該当しません。
teto代表中山メイクやヘアセットなどは、業として行うなら美容師免許が必要です。ですので、仕事としてやるなら介護美容系の資格だけではできません。
ネイル・エステも需要がないため収益化できない
ネイルとエステは美容師免許がなくても行える部分があります。ただし施設での需要がほぼありません。訪問美容teto(月約400施設・5000名超の利用者データ)では、利用者の約95%がカットのみです。
ネイルやメイクの施術は、実施頻度はご家族などとのイベントに合わせて行う事がある程度で、それを目的として施設を訪問している事業者はほぼ存在しません。
また、施設の職員側の立場から見ても、ネイルやメイクを受けた後の対応(メイク落とし・ネイルオフなど)がスタッフの業務に加わるため、積極的に受け入れるのが難しい現状があります。



メイクがQOL向上に役立つのは確かですが、介護を受けている方に対しての場合は、健康面や衛生面が優先されます。
介護関係の仕事を考えるなら、メイク後の施設スタッフやご家族の負担なども考えないといけません。
料金面も重要な市場で、カットのみの方が多い市場です。例えば街中のカット専門店で他のメニュー用意した場合、注文はどの程度になるかを想像すると分かりやすいと思います。
tetoが把握している範囲では確認されていない
美容師免許なしで介護美容系の資格を取得し、高齢者施設相手にメイクやネイルだけで収益を上げている人を、tetoが把握している範囲では確認できていません。
スクール卒業後に営業活動をしたものの1件も契約が取れず、LBLにご相談に来られた方が複数いらっしゃいます。「需要がある」「仕事を斡旋する」という説明を受けてスクールに通ったにもかかわらず、現実は全く異なったというケースです。



メイクやネイル専門の業者を入れているという施設は、私が把握している限りではありません。契約を取るのはかなり難しいように思います。
メイクやネイルのみの介護美容サービスは、現時点では需要が限定的


介護施設や高齢者施設でメイクやネイルの仕事が成立するかどうか、訪問理美容tetoの現場データに基づき、実態をお伝えします。
月間約400施設・5000名超のデータで95%がカットのみ
訪問理美容tetoは月間約400施設、5000名以上の利用者様に訪問美容サービスを提供しています。当社データによれば、訪問美容を利用されるお客様の95%程度がカットのみです。
残りの5%の中にパーマ・カラー・シャンプー・メイク・ネイルがすべて含まれます。メイクやネイルのみのご依頼はなく、カットと併せてのご利用であっても、当社データ上はごく少数にとどまっています。
パーマ・カラー・シャンプーも少数派
美容師免許が必要なパーマやカラーでさえ、一般のサロンと比べると圧倒的に少ない割合です。シャンプーも、施設によっては入浴時に済ませるので、不要とされる方も多いです。
つまり訪問美容の市場は、カットを軸とした実用的なサービスに需要が集中しており、それ以外のサービスへの需要は少ないのが現状です。
メイク・ネイルのみの需要は少ない
この規模のデータでメイクやネイルの依頼が数えるほどしかない市場で、メイクやネイルのみで週1回、月1回といった定期的な受注を継続するのは難しいと考えられます。
稀に行うとすれば、ご家族のイベントや施設の行事に合わせたケースです。それも、カットやセットと同時に行うものであって、メイクやネイルのみのご依頼は、当社ではありません。
副業として考えても、収益として成立させるだけの件数を確保するのは困難です。



需要がないので、tetoとしてネイリストやメイクアップアーティストのみのスタッフを採用する状況ではないのが現状です。
なぜ高齢者施設ではメイクやネイルのみのサービスが導入されにくいのか


需要がない理由は、施設側の事情を知ると明確になります。介護現場の実態を踏まえて整理します。
人手不足の現場では、メイクを落とす作業が追加の負担になりやすい
介護施設は慢性的な人手不足です。少ないスタッフで多くの利用者様の食事・入浴・排泄・服薬などの介助を日々こなしています。そこにメイクの時間が加わるということは、メイク後のケアもスタッフの業務に加わるということです。
メイクをした日には、就寝前にメイクを落とす時間をスタッフが確保しなければなりません。利用者様がその瞬間喜んでくださることはあっても、その後の負担を考えると施設として積極的に受け入れるのは難しいというのが現実です。
髪を切るのは必要だがメイク・ネイルは生活必須ではない
髪は伸び続けるので、カットは月に1回から2カ月に1回程度は必要になります。清潔感や衛生面からも、施設として定期的に対応しなければならないサービスです。
一方、メイクやネイルは生活上の必須サービスではありません。施設側の優先順位として、限られたリソースの中で、カット以外の美容サービスは優先度が下がりやすい傾向があります。
施設責任者の本音
複数の施設責任者に実際に話を聞きました。返ってきた声はほぼ同じです。
「髪を切るのは必要ですが、メイクやネイルは需要がありません。一時的に喜ばれる方もいますが、その後はスタッフや家族がメイクを落とすなどの対応をしないといけない。現実的ではないです」
施設側が求めているのは、定期的に利用者様の髪を整えてくれる、技術と知識を持った理美容師です。メイクやネイルだけを提供しに来る外部スタッフを受け入れる余裕は、現場にはありません。



介護の現場は、介護を受けるご本人だけではなく、施設のスタッフやご家族などの意見も踏まえて、さまざまな事項が決定されます。
髪を切る場合でも、三者の意見が分かれることがあります。
そのため、施設スタッフやご家族の考えも確認したうえで、メイクやネイルのみで対応できる仕事の需要を検討するとよいでしょう。
メイクやネイルだけの資格では上手くいかなかった人の話


「○○の資格を取得して副業で○万円」「今後の需要が見込まれる」といった情報を踏まえスクールに通ったものの、施設等との契約につながらなかったという相談が、LBLに寄せられています。
介護美容に関するスクールに通い、メイクやネイルで介護施設向けの業務を目指した方の相談事例です。
卒業後に複数の施設へ提案したところ、メイクのみ、ネイルのみの提供についてはニーズに合わないとして見送りとなるケースが続き、契約に至らなかったとのことでした。
スクールからは卒業後の仕事紹介について説明があったものの、本人は具体的な紹介にはつながらなかったと受け止めているとのことです。
数十万円の費用と時間をかけて学んだものの、仕事につながらなかったと感じ、LBLで学び直すことにした方もいらっしゃいます。



資格取得がそのまま仕事獲得につながるかどうかは、提供内容や地域、施設側のニーズなど条件に左右されるため、受講前に紹介体制や想定される業務範囲を確認することが重要です。
訪問美容や介護美容に必要な資格と、それぞれの資格の違い


介護美容・福祉美容・訪問美容の分野には、さまざまな民間資格や認定証を発行するスクールが存在します。受講を検討する前に、資格の実態を正しく理解しておくことが重要です。
訪問美容に法的に必要な資格は美容師・理容師免許のみ
訪問美容・介護美容・福祉美容として施設や在宅でカットやカラーなどの美容行為を行うために法的に必要な資格は、美容師免許または理容師免許だけです。それ以外の資格は、民間企業や団体が独自に設けているものであり、法的な効力はありません。
資格や認定証を取得していても、美容師免許がなければ美容行為を業として行うことはできません。逆に美容師免許があれば、民間資格がなくても訪問美容師として働くことができます。




民間資格の位置づけ
民間資格や認定証がまったく無意味というわけではありません。その講習を修了したという証になるので、就職活動時や施設への営業時に「体系的に学んできた人だ」という印象を与える材料にはなります。
ただし、それはあくまで補足的な意味合いです。民間資格を持っていることが施設との契約や業務量の増加に直結するとは限りません。
資格取得を目的にするのではなく、現場で即戦力になるための知識や技術を身につけることを目的に講座を選ぶことが重要です。


需要が伸びているのは理美容のカット分野
高齢化社会の進行により訪問美容の需要が伸びているのは事実です。しかしその需要は、美容師免許・理容師免許を持ちカットができる人材に対するものです。
メイクやネイルの需要が施設で伸びているという実態は、現時点では当社では把握しておりません。「高齢者が増えているから介護美容の需要がある」という説明は、需要の中身を正確に伝えていません。
伸びている需要の恩恵を受けるには、美容師免許または理容師免許を取得してカットを軸にした訪問美容の仕事を目指すことが前提になります。
美容師免許なしで高齢者に関わる仕事をしたい場合の現実的な選択肢


施設訪問でメイクやネイルだけで稼ぐのは難しい。ではどうすればいいのか。状況別に現実的な選択肢を整理します。
今から美容師免許を取る
訪問美容の仕事を目指すにあたっては、美容師免許の取得は有力な選択肢です。40代から美容師免許を取得し、美容師として活躍している方もいらっしゃいます。年齢を理由に諦める必要はありません。
美容師免許を取得するには、指定の美容師養成施設(専門学校)を卒業した上で、年2回(2月・8月)実施される国家試験(実技・筆記)に合格し、免許登録を行う必要があります。
課程は大きく昼間課程・夜間課程・通信課程の3つがあり、それぞれ期間・費用・学び方が異なります。
| 項目 | 昼間課程 | 夜間課程 | 通信課程 |
|---|---|---|---|
| 修業年数 | 2年 | 2年〜2年半 | 3年 |
| 学費相場 | 200〜300万円 | 150〜200万円 | 50〜70万円 |
| 通学スタイル | 平日毎日通学 | 平日夕方〜夜に通学 | 自宅学習+スクーリング(年数十日程度) |
| 仕事との両立 | 難しい | 可能 | 可能 |
| 向いている人 | 学業に専念できる人 | 昼間働きながら学びたい人 | 働きながら3年かけて取得したい人 |
社会人として働きながら取得を目指す場合、通信課程が現実的な選択肢です。
費用を大きく抑えられる一方、修業年数は3年と最も長くなります。自宅学習が中心となるので、3年間モチベーションを維持しながら計画的に学習を進める必要があります。
免許取得後すぐに訪問美容の現場に立てるわけではありません。
美容師免許はあくまで施術を行うための法的な資格であり、カットができるスタイリストになるには、サロンに就職してアシスタントからスタイリストとして独り立ちするための実務経験が必要です。
訪問美容の会社に就職する場合も、即戦力となるカット技術があることが前提です。tetoの様にレッスン体制が整った訪問美容の会社であれば未経験から入れるケースもありますが、そのような会社は全国的にも多くはありません。
まずはサロンで2〜3年経験を積んでスタイリストになった上で、訪問美容への転身を目指すルートが現実的です。
スタイリストとしての技術が身についた段階で、LBLのような訪問美容に特化した講習を受け、施設での施術に必要な知識や現場対応を学ぶことで、即戦力として活躍できるようになります。



30代や40代になってから美容師免許を取得する方もいらっしゃるので、本気で目指したい方は、まずは美容師免許取得を目指しましょう。


高齢者と関わる仕事を重視する場合は、介護系の資格を取得する
美容に限定せず、高齢者と関わる仕事をしたいという思いが強い場合は、介護系の資格を取得する選択肢があります。
介護職員初任者研修(旧ヘルパー2級)は、受講資格が不要で、1〜3か月程度で取得できる入門資格です。これを取得すれば介護施設の職員として勤務でき、高齢者と日常的に関わる仕事に就けます。費用は3〜5万円程度です。
高齢者の支援に携わりたいという意向がある場合は、介護の専門職として現場で実務に従事することも選択肢の一つです。自分の志向や適性、働き方の希望に応じて、利用者様との関わり方を具体的に想定しやすくなります。
訪問美容や介護美容の仕事を目指すなら


介護施設や高齢者施設における美容の仕事は、美容師免許または理容師免許を有し、カットを中心とした訪問美容に従事することが主な業務となります。
免許を取得したうえで大切になるのが、訪問美容ならではの知識と技術を現場に出る前に十分に身につけることです。一般のサロンワークとは環境も求められるスキルも異なります。
ベッド上でのカットやシャンプーに加え、高齢の方や障害のある方への配慮あるコミュニケーション、リスク管理や衛生管理など、訪問美容に特有の内容は事前に学んでおく必要があります。
座学中心の講習の場合、現場での対応を具体的にイメージしにくいです。現場実習を含む講習を選ぶことで、実務に必要な動きを事前に確認しやすくなります。
LBLでは、訪問美容に必要な知識・技術の習得から現場実習まで、一貫して学べる講習を提供しています。訪問美容師を目指している方、ブランクから現場復帰を考えている方は、お気軽にご相談ください。











